アロマセラピーを科学するということ

まことに残念なことですが、アロマセラピーに対する自然科学者の評価は手厳しいというのは、事実です。それを示すエピソードをひとつご紹介しましょう。

 

ある本に精油の一つ、シソ科のスイートマジョラムに「加温効果」があると書かれていたことがありました。

私がIFAの校長として試験を実施した際、たまたまその時は寒かったので、足の冷えを訴えるモデルさんが多く、多くのセラピストがスイートマジョラムを使いました。イギリスから来た試験官は、あの有名なジョアンナ・ホア先生でした。先生はとても謙虚なので、私にこのように質問されたのです。

「多くの受験生がマジョラムを使っていて、その理由を聞くと『【加温効果】を期待した』と言うのだけれど、マジョラムにそのような効果があるという研究が日本では一般的なのか?」と言う事でした。

私はぽかんとして、「加温効果ですよ」といいました。私が読んだ本にも、多くの他の本、それどころか、日本中のアロマ本にそう書いてあることだったからです。

すると、そんなはずはない! と彼女は心なしか強く言い返したのです。

 

私は恐る恐る、「では、英国ではマジョラムの効果はなんと教えているのですか?」と尋ねました。

 

彼女は「Warming」と答えたのです。 Warming=心温まる という意味ですと教えてくれました。

身体の冷えを温めるとは、大違い。実は、初期のTR先生の本にこの「加温効果」は載っています。私はすぐに気づきました。 

Warming を加温効果と訳してしまった人がいて、それに続く著者たちが、あたかも自分の知識のように誤った知識を拡散してしまっていたのだと。

ネットの世界でも誤った情報が拡散されることがあるが、それと同じ、しかもプロであるべき、著者の先生たちが過ちを繰り返していたのです。

 

このようなことは、学問の世界、学会では最もありえない、恥ずべき行為です。すなわち「孫引き」。。といいます。

原書を読んでいないのに、あたかも読んだように人の評論をそのまま自分の意見として書くことです。

 

このような事例は、アロマセラピーの世界では数えきれないほどあります。

アロマセラピーが学問としては素人の集まりであることを否定できない理由の一つです。ISAはこのような問題に取り組むもうとしているのです。

 

 

この精油は女性ホルモン様物質を含むので、婦人科系の病に良いといわれている、、、果たしてそうか?

誰かが言っていたから正しいということはありません。アロマセラピーや自然療法では、常識のように言われていることの大部分が科学的にはわかっていないか、

むしろその説明を科学が疑問視する事例は多いのです。アロマセラピーの書物の多くは、他の書物からの孫引きが行われていたり、商品のメーカーが発信した情報を鵜呑みにしたりするところからこのような誤解や間違いが始まっていると思われます。

私たちは、アロマセラピーの効果について謙虚であるべきでしょう

アロマセラピーの効果について、我々は次のような分類から始めます。
①本当に効果があり、かつ科学的にも説明が可能 
②本当に効果があるが、科学的に説明がついていない
③効果があると言われてきたが実は効果がなく、科学的にも疑問視または否定されている
④効果そのものがよくわからないか、あいまいである

このように、整理をして、アロマセラピーをより明確な説明のきく科学として取り組もうというわけです。

現在のアロマセラピーはほとんどが②のカテゴリであると思われます。ここで誤解されないようにお願いしたいのが、

私たちは②のカテゴリを否定しているわけではないということです。

②を検討し、多くを①のカテゴリに入れていきたいということなのです。